イボ専門外来とは
「イボ専門外来」とは、ウイルス性や加齢性など、さまざまなタイプのいぼに対して専門的に診断・治療を行う外来です。いぼは自然に治ることもありますが、放置すると数が増えたり、痛みやかゆみが出たりすることもあります。また、他の人やご家族にうつる場合もあるため、早めの受診が大切です。当院では、液体窒素療法や外用薬治療などを患者様の症状に合わせて行い、再発予防にも配慮しています。小児から成人まで幅広く対応しておりますので、いぼでお悩みの方はご相談ください。
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)
HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染症でヒトの表皮の細胞に感染してイボを形成します。小児に多い疾患ですが、すべての年齢層で観察されます。体じゅうどこにでもできますが、とくに手のひらや足の裏に多発すると難治です。一般的には液体窒素で凍らせる施術を繰り返しますが、痛みが強くとてもつらい治療法です。典型例以外にもウイルスのタイプによってミルメシア、扁平疣贅、ウイルス性足底表皮嚢腫、尖圭コンジローマなどのタイプがあり、治療法が少しずつ異なります。当院では液体窒素療法以外に、日本皮膚科学会の尋常性疣贅診療ガイドラインに準じた治療を幅広く用意しています。当院では外来を担当するすべての医師がこのガイドラインに準拠して治療を行っています。
ウイルス性イボの種類
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
体にできると鶏のとさかのように盛り上がります。足の裏では盛り上がらず扁平なことが多く難治です。一般的に液体窒素で治療しますが、難治な場合には局所免疫療法、サリチル酸パッチ、焼灼術、切除術などから選択していきます。特に指の周りにできると液体窒素療法がとても痛い上に難治なので、局所免疫療法を選択するのがお勧めです。
ミルメシア
蟻塚状の結節で足底に単発例として見られることが多いです。病変がやや深いために、液体窒素が効きにくく、いぼ剝ぎ法や切除縫縮術が選択肢です。
扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)
顔面や上肢に1-2mm程度の小さな隆起が多発します。特に顔では顔そりなどによって広がるようです。液体窒素で治療すると色素沈着を残すのが問題点です。当院では液体窒素以外に局所免疫療法を治療の選択肢としています。
ウイルス性足底表皮嚢腫
足底の皮下に袋状の丸いしこりとして触れます。歩くときに痛みを伴うようになり来院される方が多いです。治療は局所麻酔での手術以外にありません。
尖圭コンジローマ
外陰部や肛門周囲にできるイボで、鶏のとさかのような外観を呈します。液体窒素療法の他、イミキモドクリーム(ベセルナ®クリーム)が大変効果的です。
治療法
液体窒素凍結療法
液体窒素は-196℃と極めて低温で、これを綿棒に含ませていぼを凍結します。感染している細胞ごと凍傷にして脱落させるイメージです。当院では5秒~30秒凍結後に解凍を待って、2~3回凍結を繰り返しています。なでるような凍結では効果はありませんので、強い痛みを伴うのが難点です。1-2週毎に繰り返し、3か月しても効果がない場合は、他の治療の追加、変更を考慮します。保険適応。
電気凝固
液体窒素で効果がない場合の治療選択肢の一つです。施術前に局所麻酔を行う必要があります。当院では一般の電気凝固の機器ではなくRFナイフ(エルマンサージトロンDual EMC)を使用していますので、繊細な凝固が可能です。術後に傷跡が残りますので手のひら、足の裏、爪のまわりが良い適応です。保険適応。
CO2レーザー(当院では採用ありません)
標準治療が無効な場合の選択肢の一つです。施術前に局所麻酔を行う必要があります。患部にレーザー光をあててイボを蒸散します。術後に傷跡が残りますので手のひら、足の裏、爪のまわりが良い適応です。自費診療。ご希望があれば他のクリニックをご紹介します(代々木上原皮膚科クリニック)。
手術療法
小型で少数の場合、手術療法が選択肢となる場合があります。局所麻酔下に切除し、縫合します。いぼ剥ぎ法といって眼科用剪刀を用いて、いぼを削り取る方法もありますが、ミルメシアが良い適応です。
サリチル酸パッチ(スピ―ル膏)
サリチル酸には角質の剥離作用があり、イボに対する免疫賦活作用があるとされています。サリチル酸パッチを患部に貼付して、数日放置して剥がすと、イボがふやけていますのでこれを削り取り、そこにサリチル酸パッチを貼りなおすことを繰り返していきます。保険適応。
このとき活性型ビタミンD3軟膏(オキサロール®軟膏など)を併用するとさらに効果的です。自費診療。
イソトレチノイン内服
広範囲に多発する重症のウイルス性イボに対しての治療法です。顔面の多発する扁平疣贅に対しても使用することがあります。皮膚の角化を抑える薬理作用があります。日本のガイドラインにはない方法ですがかなり効果的です。副作用として肝機能障害や高脂血症がありますので採血が必要なのと、催奇形性があるので妊娠中は使用できません。20~30㎎/日で内服していただき、内服期間はおよそ3か月です。小児には使用できません。自費診療。
ヨクイニン内服
ハト麦の種皮を除いた成熟趣旨を乾燥した生薬で、保険適応があります。ただし通常量での効果は限定的で、内服する場合は成人で18錠あるいは3~6gを2~3回に分けて内服します。錠剤の場合、水で飲むのは大変なので、かじって飲み下してもかまいません。
イミキモド外用
尖圭コンジローマに対して保険適応があります。尖圭コンジローマの場合は第1選択となります。尋常性疣贅の場合は自費診療となりますが、サリチル酸パッチによる密封療法を併用するとさらに効果が上がります。
局所免疫療法(SADBE)
円形脱毛症の治療薬として知られています。人工的にかぶれを起こすことによって、患部に炎症を引き起こし、自分の免疫で治癒を目指します。SADBEをパッチテストの要領で皮膚に2日間貼り付けると、体がSADBEを嫌いと覚えます(感作)。感作成立後に患部の角質を削った上でSADBEを外用します。難治の手のひら、足の裏、爪の周りのイボに使用しますが、痛みが少ないことと自費診療ではあるものの比較的安価なことが特徴です。副作用は作用部分の赤みと痒みです。つらい場合には濃度を下げて対応します。